1.出会い 〜桜散る頃に〜
「カキーン!!!」
眺めた先では、野球部が朝練をしていた。
「小川!!!もっときちんと打たんか!!!」
「はい!!!すいません!!!」
体格のいい丸刈りの青年が、いかつい顔の中年男性に怒鳴られている。
「豪先輩・・・。」
そう、彼、小川豪(おがわ ごう)と私は入学式の日に出会った・・・。
時をさかのぼる事、2週間前。
入学式が終わったあと、佳奈と由紀が家族と帰ってしまったため、
私は、一人で校舎の周りを散策していた。
「うわ〜、中学のときよりもグランド広いなぁ〜。
というか、こんなとこ一周走れなんて言われたら・・・。
な、なんか想像しただけで寒気が、いや汗がでてきた・・・。」
私は、独り言を呟きながらグランドをうろついていた。
しかし、唐突な声が、
「・・・な〜い!!!・・・けろ〜!!!」
どうも、切羽詰って、
「わ、私かな?何かな、聞こえないよ・・・。」
「よ〜け〜ろ〜!!!う〜え〜!!!」
「よ・け・ろ?う・え?よけろ。うえ。うえ?」
私はおもむろに、上を見上げた。
すると、真っ白い物体が・・・。
ここで意識が途絶える・・・。
「う、う〜ん・・・。あれ?」
気づくと私はベッドで眠っていた。
「ここ・・・、保健室?」
消毒液の匂いと、カーテンでベッドが仕切られているのを見て、そう判断した。
「なんで、私寝てるのかな?えっと、あの時・・・。」
私は、なぜここで寝ていたのかを考えた。
「そうか、あの時!!!野球のボールが当たったんだ・・・。」
どうも、さっきから痛かった頭をさすりながら気づく。
ガラガラガラッ!!!
「!!!」
突然誰かが入ってきて、思わず身構える。
シャーッと、カーテンが開かれ、野球のユニフォーム?
を着た青年が顔を見せた。
「あっ、もう起きて大丈夫?ゴメンね。
まさかあそこに人がいるとは思わなくてさ・・・。
もしかして、新入生?」
「は、はい。」
緊張のあまり声が裏返った。小中、共学の学校だったとはいえ、
あまり男子に免疫がないんです・・・。
しかも、二人きりだし・・・。
「やっぱり。これからは気をつけてね?
あそこ、普段は危ない奴らの溜まり場だから・・・。
と、そうだった。」
彼は、抱えていたものを私の頭に置いた。
「つ、冷たいですぅ。」
「ははっ。氷だからね。しばらくこうして冷やしててね?」
すると彼は、私の手にビニールに入った氷を手渡した。
「ゴメンね。俺部活戻んないといけないから・・・。
保健の先生も今日はもう帰っちゃったし。
もうすぐ部活終わるから待っててくれない?」
「へ?」
私は受け取った氷で頭を冷やしながら、頭に?を浮かべた。
(ど、どういうこと?な、なんでかな?)
「一人で帰れそう?なら、いいんだけどさ?」
彼は、申し訳なさそうな苦笑いを浮かべて言った。
(私のこと心配してくれて・・・。)
「あっ!いえ、ダメ。いや大丈夫で・・・。」
私は、彼の親切に甘えるというか、二人でいることに耐え切れずに立ち上がって、
走り去ろうと思った。
しかし、立ち上がろうとした瞬間、
鋭い痛みが私を襲い、よろめいてしまった。
(や、ヤバイ!)
床に向かって傾いていく!!!
ボフッ!!!
床にぶつかると思っていたら、床より柔らかい何かにぶつかった。
「大丈夫?急に立つと危ないよ?」
何かの上の方から、彼の声が聞こえる・・・。
(聞こえる?・・・、ってまさか!!!)
「あ、あのっ!!!その・・・。」
倒れそうになった私を、彼はとっさにかばい、抱きとめてくれていたのだ。
「え?あ、あぁ!ご、ゴメン!!!」
彼も、自分たちの状況に気づいたようだ。
なんとも気恥ずかしい空気が流れる。
互いが、互いに離れられずにいる状況で、
「立西笑さん。新入生の立西笑さん。ご家族の方がお見えになっているので、
大至急職員室までお越しください。」
と、突然の放送が沈黙した二人の空気を壊した。
「わ、私?家族?って、あっ・・・!」
「ん?って、あぁっ・・・!ご、ゴメンね。と、とりあえず、ゆっくり立ってね?」
「は、はいぃ〜・・・。すいません・・・。」
私は、抱きかかえられていた姿勢から、ゆっくりと立ち上がった。
「家族の人が来たなら、もう大丈夫かな?」
彼は、照れ隠しに鼻をかきながらそう言った。
「すいません・・・。ご迷惑をかけてしまって・・・。」
「いや、迷惑をかけたのはこっちの方だよ?だから立西さんが謝ることはないよ。ね?」
屈託無く笑う、彼に私は何も言えなかった。
「とりあえず、職員室分かる?」
「すいません・・・。教えてもらえると助かります。」
「じゃあ、心配だし。一緒に行くね?」
私たちは職員室を目指した。
(ところで、ご家族って?誰?誰が来たの?)
職員室に向かう途中で、名前は、小川豪。3年生で野球部に所属していることが分かった。
「今度からは気をつけてね?」
「は、はい。今日はありがとうございました。」
「じゃあ、部活に戻るね。明日から頑張ってね。じゃっ。」
「はい。さようなら〜。」
豪先輩は、颯爽と部活へと向かった。
「一体、誰が来たんだろ?とりあえず、入ってみなきゃ・・・。」
私は、不安に駆られながら職員室の扉をくぐった。












